香料素材

【Sandal】甘くて柔らかな香木の香り ~白檀~

かよこ

最近、お香にハマっていろいろな香りの種類を集めているんですよ!!お線香や香袋、練香は木の香りがして、とても癒されます。やはり、日本人にとって木の香りはとても身近で嗅ぐと落ち着きますね。その中でも白檀の香りはミルキーな甘さと柔らかな木の香りがしてとても大好きです。
お香だと非常に馴染みがある白檀の香りですが、香水や日用品にも使われていますか?

シゲ

こんにちは!! 香料研究者のシゲです。

白檀の香り、とても素敵ですよね!!私自身もお香は大好きなので、白檀や沈香といった香木の香りを自宅で焚いてリラックスして過ごすことが多いです。お香の香りは日本人にとっては昔から馴染みの深い香りで、寺院や冠婚葬祭の際にも香木の香りが用いられます。また、サンダル(白檀)の香りはお香だけではなく香水や日用品でも頻繁に使用される香調です。今回は、香木の1つで最も馴染みのあるWoody香のサンダル(白檀)について解説していきます。

Sandal (白檀)の概要

Sandalwood Tips

天然サンダルウッド

サンダルウッドは『白檀』『檀香』と呼ばれ、古くから日本人に愛されてきた香木の1つです。日本には671年天智天皇の時代に中国を経て伝えられ、「日本書紀」にもその記録がある程に古くから愛用されてきた木の香りです。

Sandalwood Picture

科・属:ビャクダン科ビャクダン属
原産地:インド (インドネシア)
英語名/学名:Sandalwood/Santalum album

サンダルウッドは、東インド産の樹木である。サンダルウッドには、中心部の心材とその周囲の辺材から構成されている。香りの中心となるのは、淡黄色で温和な光沢のある心材の部分で精油の量や質が最も良いとされている。一方で辺材の部分に関しては、白色で香気が比較的少ないと言われている。優れた香気を有するサンダルウッドは、やや黄色味があることが特徴です。

サンダルウッドというと東インド産を指すことが多いですが、原産地はインドネシアとも言われています。また、サンダルウッドには変種が多くあり、その1つがオーストラリア産のサンダルウッドで植物起源が全く異なりますが広く流通しています。

サンダルウッドとその変種は東インドを始めとしてスリランカ、オーストラリア、ハワイ諸島、タヒチ、フィジー、ニューカレドニア、小笠原諸島やアフリカにも広く分布しています。香りの品質の良否を別にすると、全ての材に芳香を有していますが、最も香気に優れているのは東インドサンダルウッドであることは間違いありません。

天然のサンダルウッド精油は、インド南部のカルナータカ州が中心地となっている。カルナータカ州の最も大きな都市は「Bangaluru(バンガロール)」、2番目に大きな都市は「Mysuru(マイソール)」で合成サンダル香料にも都市の名前が使用されている程にサンダルウッドの栽培の中心となっています。実際に、全世界のサンダルウッドオイルの生産もコントロールされており、木材のままフランスやアメリカに輸出されることもあるが大部分はインド国内で水蒸気蒸留して精油を得て輸出されています。現在は、資源保護のためにサンダルウッドの伐採が減少しているので、最盛期と比べて精油も非常に高価で生産量が減少している状況です。

天然サンダルウッドの香気成分

天然のサンダルウッド精油は淡黄色の粘性の高い液体で、柔らかさとクリーミーでバルサミックな甘さがあるWoody様の香りで残香性にも優れています。他のWoody香としてはCedar(セダー)、Agarwood(沈香)やVetiver(ベチバー)がありますが、非常に柔らかで甘い印象を与えるのがサンダル香調の特徴の1つです。

サンダルウッド精油の香気として重要な成分は、Santalol(サンタロール)と呼ばれるセスキテルペンアルコールの化合物になります。Santalol(サンタロール)には、主成分として含有されるalpha-体と香気成分として重要なbeta-体があります。産地によって含有量に差はありますが、どちらもサンダルウッド精油の重要な香気成分として知られています。天然由来の成分として非常に注目されている香気成分ですが、有機合成で製造することが難しいために現在のところ商業的に利用することは出来ない状況です。

Chemical Structure of alpha-Santalol

alpha-Santalol(アルファ-サンタロール)
CAS : 115-71-9
サンダルウッド精油の主成分
精油中に約60%程含まれている

Chemical Structure of beta-Santalol

beta-Santalol(ベータ-サンタロール)
CAS : 77-42-9
サンダルウッド精油の重要香気成分
精油中に約25~35%程含まれている

現在、天然のサンダルウッド精油の重要香気成分であるbeta-Santalolの研究としてバイオ技術を使った研究開発がおこなわれています。この技術は、サトウキビなどから得られた糖を原料としてバイオ技術による酵素反応を利用しています。近年では、バイオ技術に強みのある会社(Amyris, Evolva)と香料会社(Givaudan, Firmenich)が共同で技術開発を進めることで、天然由来の重要香気成分であるセスキテルペン類の化合物やAmber(アンバー)香の重要香気成分であるAmbroxan(アンブロキサン)を安価に製造することが出来ることから非常に注目を集めています。

合成サンダル香料素材

天然のサンダルウッド精油は供給量も少なく、非常に高価なので使用することが出来る製品は限定されてしまうのが現状です。また、サンダルウッドが生育するまでに時間を要することからも今後も引き続き天然のサンダルウッド精油の状況は変わらないことが予想されます。それほど稀少なサンダルウッド精油の代用として、サンダル香を有する安価な合成香料素材が開発されてきました。現在の香水や日用品のほとんどのサンダル香は、合成香料を利用して香り付けをしています。

汎用の合成サンダル香料素材

香水や日用品にサンダルの香りを付与したい場合に、合成サンダル香料素材『Santaliff(Sandalmysore Core)』『Bangalol(Bacdanol)』の2つが頻繁に利用されます。化学構造的には非常に似ている化合物で、どちらの化合物もサンダル様の香りを有しています。香料会社によって製品名称に違いはありますが、インドのサンダルウッドの産地の地名を付けている点がとてもユニークに感じられます。

合成サンダル香料素材は、松脂や松精油、針葉樹に含まれるa-Pinene(ピネン)を原料として合成されます。a-Pineneを酸化してa-Pinene Oxideとし、開裂してCampholenic Aldehydeを得た後、Aldehyde部位を反応させることで各種の合成サンダル香料素材を合成することが出来ます。

Chemical Structure of Santaliff (Sandalmysore Core)

Santaliff (Sandalmysore Core)
CAS : 28219-60-5
Maker : IFF, 高砂香料, 花王

Chemical Structure of Bangalol (Bacdanol)

Bangalol (Bacdanol)
CAS : 28219-61-6
Maker : Firmenich, IFF, Symrise, 高砂香料

以前は、Santaliff(Sandalmysore Core)が世界的に広く利用されていました。インドでは今もSantaliff(Sandalmysore Core)の人気が高く、葉巻タバコやチューインガムのフレーバーとしても利用されています。しかしながら、最近ではクリーミーな甘さを再現していることからもサンダル香としてBangalol(Bacdanol)が利用されることが世界的に多い傾向にあります。

香料会社特有の合成サンダル香料素材

香水や日用品の調合香料用として広く利用されているサンダル香調の合成香料はSantaliff(Sandalmysore Core)やBangalol(Bacdanol)ですが、最近の柔軟剤等の日用品にはGivaudan社が開発した『Javanol(ジャバノール)』が使用されています。Javanolには、SantaliffやBangalolよりも香り強度が強いので少量でも香りを感じることが出来ることと布や髪などの対象物に残り易いという特徴があります。

Chemical Structure of Javanol

Javanol (GivaudanのSpecialty素材)
CAS : 198404-98-7
Maker : Givaudan

また、各香料会社はより良いサンダル香の提供と調合香料の差別化を目的としてオリジナルの素材を開発しています。Givaudan社のJavanolと同様にFirmenich社の『Firsantol(フィルサントール)』や『Polysantol(ポリサントール)』も使用されている製品があります。個人的には、汎用のSantaliffやBangalolよりも天然のサンダル香に近い甘さと柔らかさのあるサンダル香が印象的で高級感がある香りを演出することが出来る印象です。そのため香水や化粧品といったラグジュアリーな香り製品へ使用される傾向が強いです。

ALL Sandal Chemical Structure

サンダル香のお薦め香水

著者が好きなサンダル香を持つ香水を2点紹介させて頂きます。個人的には、甘さがある柔らかいサンダル香が好みなのでムスクやバルサミックと併せたボトムノートを評価した際に好みだった香水となります。

SAMSARA (Guerlain)

まずは、サンダルウッドの香りの代表的な存在でもあるゲラン社の『サムサラ オードトワレ』です。サムサラとは、サンスクリット語で「永遠の再生」=「輪廻」を意味する言葉です。サムサラが初めて販売されたのは1989年で、30年近く経っていますが今なお愛される名香の1つです。

香りの構成は、トップノートのシトラスの爽やかさと桃の甘さから始まり、ミドルノートでは香りの主役を成すジャスミンとイランイランが濃厚で上品で華やかでありながらもセクシーな印象を与えてくれます。最後のボトムノートは、サンダルウッドの柔らかさと甘さをアイリス、ムスク、トンカビーンズ、バニラの絶妙なバランスと共にいつまでも感じられる処方となっています。

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MILKY MUSK (PARLE MOI DE PARFUM)

2つ目は、PARLE MOI DE PARFUM社の『MILKY MUSK』です。あまり馴染みのないブランドですが、最近人気があるニッチフレグランスの中で著者が気に入った香水です。

香りの構成はとてもシンプルで、ムエットや肌に載せるとすぐにサンダル様の甘さと柔らかさのある香りがほのかに香ります。トップノートにシトラスやフローラルノートを使用されていないので、最初は香り立ちが重く感じられますが徐々に天然のサンダルウッド様の香りが広がってきます。サンダルウッドのミルキーな甘さを滑らかなムスクが補強して、最初から最後まで優雅で高級感のあるサンダルウッドとムスクのコラボレーションを感じることが出来る香水です。男性にはもちろんですが、女性が纏っているとカッコ良い女性を演出出来るユニセックスな香りではないかと思います。

香水名 : MILKY MUSK
販売会社 : PARLE MOI DE PARFUM
香調 : Sandalwood, Musk

貴重なウッドにたっぷりのムスクを組み合わせ、なめらかで濃厚なムスクとサンダルウッドが肌と一体化するように包み込みます。ほんの少し動くだけでふんわりと漂う、ミルキーなウッディノート。あなたの影となって寄り添うように、優雅で捉えどころのない香りを一日中放ちます。なめらかで深みのあるウッディノートは、すべての人に自信を持っておすすめできるフレグランスです。

主な香調:サンダルウッド、アンブレットリド、イチジクミルク

L’ATELIER DES PARFUMS Home Pageより引用
【Musk】絹の様に繊細で暖かみのあるムスク本記事では、魅力的で残香性にも非常に優れたムスクの香りについてご紹介致します。ムスクの香りは、柔らかな肌や艶やかな髪を表現する重要な香料成分として香水や日用品にも使用されています。本記事がムスクの香料に関してご理解するためのお役に立てれば幸いです。...

まとめ

サンダル香料素材のまとめ
  • 天然サンダルウッド
    インド産が品質に優れていて、現在も供給の中心
    香りの特徴成分は、alpha-Santalol, beta-Santalol
  • 合成サンダル香料素材
    汎用素材 : Santaliff, Bangalol (Bacdanol)
    特徴素材 : Javanol, Firsantol, Polysantol
    香料会社が品質差別化のために特徴ある素材を開発中
  • お薦めのサンダル香の香水
    SAMSARA Eau de Toilette (Guerlain)
    MILKY MUSK (PARLE MOI DE PARFUM)
シゲ

今回の記事では、線香や練香にも使われている古くから愛される香木の1つのサンダルウッドに関しての内容を書かせて頂きました。
天然のサンダルウッドは非常に高価なので、お線香等の香道関連の製品や一部の香水を除いて使用することは難しいのが現状です。多くの香水や柔軟剤等の日用品には、合成サンダル香料素材が使用されている場合がほとんどであることを覚えておいて下さい。

参考文献

  • 中島基貴 偏著 『香料と調香の基礎知識』産業図書 1995年
  • 日本香料協会 『香りの百科』 朝倉書店 2009年
BIRTHDAY FRAGRANCE

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