Fragrance (香料)

【お薦め書籍】香水と香料素材を勉強しよう!!

かよこ

春が近付いて来て、4月から新社会人の方や就職活動中の大学生を見かける様になりましたね。フレッシュで活き活きしている姿を見ると、自分が新社会人として入社した頃や就活のことを思い出して元気を貰えます!!

ところで、香料業界も新社会人の方や就活の方が多くいると思うのですが、皆さんはどの様にして香水や香料業界に関する知識を勉強しているのでしょうか??

シゲ

こんにちは!! 香料研究者のシゲです。
今回は香料に関する勉強をする際にお薦めする書籍を紹介したいと思います。

私は、香料に関する仕事を10年以上しています。しかしながら、就活の時には香料業界に関する知識は非常に乏しく、漠然と製品用の香料開発に携わりたいと思っていました。実際、香料会社や香料素材に関することはどの様に勉強したら良いのかさっぱり分かりませんでした。入社してから香料業界や香料素材に関する知識を自分で勉強し、諸先輩方から教わって現在も香料素材に関する仕事に従事しております。

本記事では、私が香料の勉強に用いた市販の書籍を紹介したいと思います。香料業界に興味がある方、調香師を目指している方、香水等の販売員の方、また、香水が好きでもっと知識を身に着けたいとお思いの方のご参考になれば幸いです。

Contents
  1. 香水に関する書籍
  2. 合成香料&調香に関する書籍
  3. 天然香料に関する書籍
  4. 調香師に関する書籍
  5. まとめ

香水に関する書籍

香水図鑑 (マイナビ出版)

全ページフルカラーの美しい香水図鑑です。「文字だけだと読むのが大変だよ!!」という方や香水にまだ詳しくないという方にお薦めです。昔ながらのクラシックな名香から近年人気のあるニッチフレグランスまで、フルカラーの美しい写真と共に幅広く紹介されているので眺めているだけでも非常に楽しいです。また、香りと共に非常に大切な香水ボトルのデザインも楽しめることも非常にお薦めです。
これから香水の世界を開拓したい方、どんな香水があるのか調べたい方にとっては値段もお手頃で読み易い内容になっています。もちろん、香水に詳しい方でも試したことのない新しい香りとの出会いや発見があると思います。

** 一部掲載されていない香水やメゾンがありますことはご了承下さい。

フォトグラフィー  香水の歴史 (ロジャ・ダヴ、原書房)

香水で有名なゲラン社の「教育広報部」に就職し、類まれな情熱で香水に関する見聞を深めた『香水学教授』のロジャ・ダブ氏が執筆した香料の書籍の1つです。また、日本でも活躍されている調香師の新間美也さんが監修しているので、日本人である我々にも非常に読み易い形で表現されています。香水や香料に関する基礎を学びたい方はまずはこの本を読んでみると良いです!!
「香水でよく聞くトップ、ミドル、ベースノートって何?」、「パルファムとオードパルファムって何が違うの?」「シプレやフゼアノートはどんな香り?」等の基本的な疑問にも簡潔な表現で分かり易く解説されています。化学的な表現も一部あるのですが、難しい表現は使われていないので香水や香料に関する知識の導入には非常にお薦めの一冊です。

世界香水ガイドⅢ (ルカ・トゥリン、原書房)

「匂いの帝王」と呼ばれ、香りの研究者としても活躍しているルカ・トゥリン氏と妻のタニア・サンチェスが世界中の香水を評価して、5段階評価でレビューを載せている有名な書籍です。レビューは非常に率直な表現で示されていますが、強烈でストレートに批判しているケースもあります。彼らの表現に関しては賛否両論があるのですが、読んでいて非常に面白いです。「そこまで言わなくても・・・」とか思いながら私は読みました。実際、自分の香水に関する好みや評価とルカ・トゥリン氏の評価が一致して納得出来る場合もありますし、全く正反対の意見で「ルカ・トゥリン氏と絶対好みが合わない」と感じたりする場合もあります。
これから香水の世界を開拓する方や香水に詳しくない方も自分のお気に入りの香水について見てみて下さい。当然、ルカ・トゥリン氏の評価レビューと合致するかどうかは気にする必要ありません。香りには人それぞれの好みがあるので、自分が好きだと思った香水や香りが1番良いのです。ただ、同じ香水を通して海外の最前線にいる香りの研究者の評価結果と比較することは非常に楽しいと思います。

合成香料&調香に関する書籍

香料と調香の基礎知識 (中島基貴、産業図書)

花王株式会社で香料の研究開発に長らく携われた中島基貴氏の著書で、香料の基礎から香水の処方に至るまで内容が非常に充実した一冊です。花王株式会社というと日用品のイメージが強いですが、自社で洗剤等の製品の香りを作っているとのことで香料会社に引けを取らない香料の研究をされています。実際に、この本も嗅覚に関する知見や香料素材に関する内容が非常に詳細に記載されており、この一冊をマスターすれば香料の基礎は問題なく身に付いていると言える程の内容です。非常にコンパクトですし、本格的に香料に関する学習を始めたい方々にお薦めしたい一冊です。

香料の科学 (長谷川香料株式会社、講談社)

高砂香料株式会社に続く日本2位の香料会社である長谷川香料が執筆された貴重な一冊です。香料会社から一般に出版されている本は非常に少ないので非常に参考になる本です。全編カラー刷りで写真や図が豊富にあるので非常に見易いのですが、内容はとても専門的になっています。ある程度の科学的な知識がないと理解するのが難しいと思います。上記で紹介した平山令明教授の「香りの科学」を読んだ後に本書を読むことをお勧め致します。香りに関する科学的知識が非常に見易く、体系的にまとめられている香料について学ぶ人にとっての良書の1つです。

香りの科学 ~匂いの正体からその効能まで~ (平山令明、講談社)

東海大学特任教授の平山令明教授が、科学の知識が乏しい方々にも理解し易い様に懇切丁寧に言葉を尽くして香りの科学を解説している一冊です。平山教授の著書は、科学の面白さを非常に理解し易い形で解説している良書が多いことで知られています。本書では、香りに関する科学的な基礎知識が網羅されており、主要な香料素材に関しても化学式や香りの解説が丁寧で理解し易い内容になっています。最初に紹介した「香水の歴史」よりも香料の科学に関して一歩踏み込んだ内容を勉強をしてみたいという方にお薦めです。

香り創りをデザインする~調香の基礎からフレグランスの応用まで~
(堀内哲嗣郎、フレグランスジャーナル社)

本書は、上記の「香りと調香の基礎知識」よりも少し調香に関する内容が多い書籍です。まず初めの第1章が「調香師(パフューマー)」から始まり、調香師に必要な能力や仕事の内容について書かれています。10~12章は様々な香調の調合香料に関する基礎知識と製品系への応用について詳細に書かれており、調香師を目指す方であれば本書は手元に置いておいて損はない一冊だと思います。
また、嗅覚メカニズムや香料化学、匂いの計測方法等についても詳細に記載されているので香料の学習を始めたばかりの方々やエバリュエーターの方々にとっても非常に有益な情報が記載されています。本書は科学的な内容が多いのと専門性が高いので、まずは基本的な香料の知識を学ばれた後に読む方が理解し易いと思います。

名香にみる処方の研究 (広山均、フレグランスジャーナル社)

長谷川香料で調香研究室長を務められた広山均先生が著作された非常に重要な本です。広山先生ご自身が調香研究して導き出した名香の香料処方(レシピ)を公開しており、ほぼ香水の調香に関する内容のみの一冊です。調香師の世界では、調香トレーニングの一環として香水のコピーをして香りの評価能力の向上と調香技術を身に付けていくと言われていますがその助けとなる一冊だと思います。名香の成り立ちや構成を俯瞰出来ると共に、自分が考えた香料処方と見比べることが出来ます。調香師を目指す方はぜひ持っておくべき本だと思います。調香師を目指している以外の方も香料の科学を勉強した後に本書を読むことで、世界中で知られる名香がどの様な香料素材で構成されているのかや自分が気付いていない香調が含まれていることに気付かされる可能性があるのでお薦め出来ます。

香料入門 ~香りを学びプロを目指すための養成講座~
(吉儀英記、フレグランスジャーナル社)

高砂香料工業株式会社でフレーバーとフレグランス共にご担当された後に、日本医歯薬専門学校で講師をされている吉儀英記氏が書かれた香料専門教育のために書かれた一冊です。「入門」と書かれていますが体系立った内容が網羅されています。また、フレーバーの基礎知識や調合についても書かれているので、フレグランスだけではなく幅広く香料に関して勉強したい方には非常にお薦め出来ます。他の一般的な香料に関する書籍である程度学習を進めてから、総まとめとして本書を利用すると理解が深まると思います。

増強新版 合成香料 (日本香料編集委員会、化学工業日報社)

香水や製品用の調合香料に使用される合成香料素材に特化した一冊です。合成香料素材に関する物性、製造メーカーや合成製法がまとめられており、非常にボリュームのある内容です。合成香料素材は500種類以上はあるので全てを理解して覚えておくことは出来ませんので、索引を引いて都度調べるための辞典としての利用が主用途になります。
香料会社で合成香料開発を担当される方や調香師を目指す方は必ず持っておいた方が良い本です。

一方で、香料業界のお仕事に従事していない方々には不要です!!お値段も高いですし、持ち運べる様な本でもないので一切お薦めしません。

天然香料に関する書籍

精油の化学 ~イラストで学ぶエッセンシャルオイルのサイエンス~
(長島司、フレグランスジャーナル社)

高砂香料工業株式会社で精油や香りの研究開発をされていた長島司先生が書かれた精油に関する書籍です。現在、長島司先生は日本園芸協会認定のハーブコーディネーターとして講演会等をされており精油に関する長年の知識と経験をまとめられた1冊になります。本書は、全ページがカラー印刷なので非常に見易いことや初学者にもイメージし易い様にビジュアル感覚で理解出来る様にイラストやグラフが多用された形で説明されています。
第1部では、精油の基礎学として精油の抽出方法が非常に解り易い図を用いて書かれていまいます。また、第3部では各種精油の成分構成と生理・心理効果に関して丁寧にまとめられております。これから精油の勉強をされたい方やアロマテラピーに興味がある方にとっての入門書として非常に適した、お薦めの一冊です。

調香師が語る香料植物の図鑑
(フレディ・ゴスラン / ゲザビエ・フェルナンデス) 原書房

本書は、総勢38名の有名調香師が香料として利用される植物71種類について香りの特徴や香水への利用に関して幅広く解説されているビジュアルが非常に美しい一冊です。発売された頃は、SNSでも話題になったのでもしかしたらご存知の方々も多いかと思います。
本書のお薦めポイントは、上記の長島司先生の「精油の化学」と同様にビジュアル的に理解出来る様に多くの美しい植物の写真と共に調香師が香水への応用を解説してくれるので香料が非常に身近な存在に感じることが出来ることです。しかしながら、香水に利用される天然香料植物が網羅的に解説されているわけではないので、タイトルにあるような「香料図鑑」として使うには少し無理があります。なので、これから精油の勉強をされたい方やアロマテラピーに興味がある方にとっての入門書として非常に適した、お薦めの一冊です。

南フランス 香りの花めぐり ~花から学ぶ調香の秘訣~
(広山均、フレグランスジャーナル社)

長谷川香料で調香研究室長を務められた広山均先生が著作された一冊です。広山先生が南仏プロヴァンス地方で出会った花々について親しみやすい文体で語られています。また、フランス以外で咲く香料植物の花や日本で季節の到来を告げる花々について花言葉も交えながら紹介されており、気軽に楽しく読むことが出来ます。天然香料に関する香気成分やアロマテラピーに関する知識を身に付けるというよりも香料に長年携わられてきた研究者のエッセイとして気軽に読める本です。

香りの百科 (日本香料協会、朝倉書店)

この本は、まさに『天然香料の辞典』です!!
香料植物はもちろんですが、フレーバーに使われる食べ物も網羅された内容になっているので香料の研究開発において調べ物をする際に非常に役に立ちます。「ローズ」「ジャスミン」といった香水に利用される天然香料植物の分類や産地、香りの特徴や重要な香気成分等の有用な情報が端的にまとめられているので汎用性が高く非常に使い易いです。筆者自身もこの本は常に会社のデスクに置いて、調査する際に利用することが多いです。
しかしながら、欠点としては文字だけで書かれているので読み難いことや値段が少し高いということがあります。初学者にはややお薦めし難い一冊です。まずは、他の天然香料の本を読んだ後に最後の一冊としてずっと手元に置いて使うことを前提にすることをお薦め致します。

調香師に関する書籍

香水 ~香りの秘密と調香師の技~
(ジャン=クロード・エレナ、白水社)

エルメスの専属調香師を長年勤めた世界で最も著名な調香師の1人であるジャン=クロード・エレナ氏が執筆した一冊です。ジャン=クロード・エレナ氏は『エルメスの庭園シリーズ』を生み出した調香師として非常に有名で、香水の調香や香料素材に対するこだわりが非常に強い方です。そんな世界で愛される名香を生み出し、現役で活躍されている調香師ジャン=クロード・エレナ氏が、非常に分かり易くも親しみやすい語り口で執筆された香りの手引書となる貴重な本です。
第4、5章はジャン=クロード・エレナ氏がご自身の経験等を元にした非常に価値の高い情報が記載されており、これから調香師を目指す方々は必読の一冊だと思います。もちろん、調香師を目指す以外の方々にも香水に関する考え方や調香師がどんなことを考えながら香りを作っているのかイメージし易い内容です。

調香師日記 (ジャン=クロード・エレナ、原書房)

上記と同じ調香師ジャン=クロード・エレナ氏の著書をもう一冊紹介します。本の題名の通りのジャン=クロード・エレナ氏の日記で、上記よりも非常にカジュアルな内容です。香水の産地である南仏グラースでの生活や仕事に対する考え方や姿勢などについて書かれています。世界有数の調香師として香水の香りを追求し続ける人がどの様な思考をして仕事に取り組んでいるのか、プライベートをどの様に過ごしているのか知ることが出来ます。体系的な知識を得るという内容よりも、一流の方の人柄や考え方、日常の過ごし方といった香りの世界で働く人としての生き方を感じることが出来る本です。

まとめ

シゲ

今回は、自分がお薦めする香料の勉強に利用出来る書籍について紹介させて頂きました。筆者自身も香料に興味はあるけれど、入社するまで香料の勉強をどの様にすれば良いのか全く分からずにモヤモヤしていた時期がありました。この記事が今まさに香料に興味があって迷われている方や香料業界で働きたいと思っている方々にとって少しでも有益な情報となれば幸いです。筆者も香料の研究開発者として日々精進しておりますので、一緒に頑張りましょう!!

本記事では全てをご紹介出来ていないですが、香料に関する有益な書籍は他にも多々あると思います。ご存知の方や他にもお薦めがありましたらご紹介頂けると嬉しいです。

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