香りって沢山の種類があって・・・。
レモン、ローズ、ミントなんかは馴染みのある香りだから直ぐにわかるけど、他にはどんな種類の香りがあるの??
こんにちは!! 香料研究者のシゲです。
今回は、香りの種類を表現する『香調』に関してお話ししたいと思います。
香りの種類って非常に多くて、植物の種類や香水用途向けに作られた香調もあるので難しいように感じます。しかしながら、実際には主用途で使われる香調表現は限られていますので代表的な香調をまずは覚えましょう!!
香調一覧(フレグランス用途)
下記にフレグランスで使われる香料の代表的な香調の一覧をまとめました。
主香調には香水やフレグランスで使用される代表的な香調を示しており、副香調には主香調に付随する柑橘類や植物の代表例を記載しています。Citrus, Floral, Fruityの主香調では、副香調に該当する花や植物が多くあるので代表的なものだけ記載しています。
- 主香調にどんな香調があるのかを確認
- 主香調を把握したら副香調にどんな種類があるか確認
- 副香調にある植物や花、果物の種類を理解
- 実際に食べてみる、精油を嗅ぐなどして香りを確認
香調分類は、香料会社や個人によって種類やどの程度細かく分類するか異なります。同様に、主香調にどの様な副香調を持つ香料素材を含めるかについても個人差があります。
下記は、私が香調分類する際に使用している一例です。参考例として、ご自身に適した香調分類を作成するために活用下さい。
主香調 | 副香調 | 香りの詳細 |
Aldehyde | – | CHANEL No.5で一躍有名になった香調 洗剤や石鹸に使われ、脂っぽい化学的な香り |
Citrus | Bergamot Lemon Orange Lime Grapefruit | 柑橘の爽やかで酸味と甘さのある香り 柑橘の種類によって酸味や甘さが異なる 香水のトップノートに使われる |
Green | Leafy Cucumber Galbanum | 植物の青葉を連想させる爽やかな香調 Leafyは葉を連想させる青臭い香りだが、 Galbanumは野菜っぽい硬質で生臭い香り |
Marin (Aqua) | Ozone Aquatic | Marinは、海辺や海藻を連想させる香調 OzoneやAquaは水を連想させる香調 どちらも近い意味合いで使用されている |
Minty | Peppermint Spearmint | 爽やかな清涼感を感じる香調 一般的に使用されるのはPeppermint Spearmintは歯磨き粉の様な香り |
Herbarom (Herbal) (Aromatic) | Anis Basil Chamomile Cypress Rosemary Eucalyptus Lavender | ハーブ庭園の様々な植物が混ざり合った香調 Greenで少し薬っぽい印象を与える香りの総称 ハーブは種類が多く、それぞれ香りが全く異なる 精油の多くは、アロマセラピーで使われる |
Spicy | Clove Cinnamon Pepper Ginger | 刺激的な甘さや辛さの印象を与える香調 食品用フレーバーでも頻繁に使われる香り スパイスにも多くの種類がある トウガラシの様な辛さ、シナモンの様な甘さ 生姜の様な苦味など様々な特徴を持つ香り |
Fruity | Apple Apricot Coconut Cassis Cherry Mango Pear Peach Strawberry Tropicalfruit | 柑橘類以外の果物(フルーツ)の香調 AppleやPeachなど我々の生活に身近な香り 柑橘類と違ってフルーツに天然精油はない |
Floral | Rose Jasmin Muguet Lilac Geranium Hyacinth Magnolia Mimosa Tuberose Osmanthus Ylang Ylang | 甘く、柔らかい花の香調 3大フローラルはRose, Jasmin, Muguet 他にもLilac, Tuberose, Yang等の香りがある 何種類かのFloral香調を組み合わせて 作ったFloralの香りをFloral Bouquetと呼ぶ |
Gourmand | Cacao Chocolate Caramel Coffee Vanilla Milk | 豆や種子から取れる甘い匂いの香調 食品にも使用される身近な香り |
Woody | Cedar Sandal Orris Woody-Amber Agarwood | 樹木の芯材や幹の香調 木の削りカスや檜の様な落ち着く樹木の香り 白檀や沈香など香木として馴染みのある香り |
Earthy | Patchouli Vetiver | 湿った土の様や植物の根っこの様な香調 香水の重要素材、カビ臭く好き嫌いのある香り |
Mossy | Oakmoss Treemoss | 樫の木に生える苔(コケ)の香り 古くからあるクラシックな香水の最重要素材 |
Honey | – | 蜂蜜の様な甘さのある香調 Gourmandより柔らかく、甘さ抑えめの香り |
Leathery | – | 新品の皮製品を連想させる香調 Animalicの香りにも非常に近い |
Animalic | Civet Castoreum | 動物系の香りを想起させる香調 動物園やサファリパークに行った際に感じる香り |
Balsamic | Benzoin Vanilla Tonka Beans | 樹脂から取れる樹液の様な甘くて重たい香調 適度な甘さと保留性が高いことから持続性が良い |
Musk | – | 麝香鹿の生殖腺分泌物から取れる動物性の香調 薄めて嗅ぐと、とても奥深く官能的な香り 特に人の肌との相性が良く、色気のある香り |
Amber | – | マッコウクジラの結石であるAmbergrisの香調 Muskより硬い印象だが、Powderyな甘さがある |
Powdery | – | 白粉(おしろい)を付けた様な粉っぽい甘さの香調 他の香調と合わせて香りを表現する際に使用される |
Fougere | – | Lavender, Oakmoss, Tonka Beans(Coumarin) 上記3つを組み合わせた男性用香水に多い香調 中年の男性が付けていたポマードの香りです |
Chypre | – | Coty社が発売した Chypreという香水が発祥 昔ながらのクラシックな女性用香水に多い香り Citrus, Oakmoss, Amberを中心に構成され、 更にFloral, Woody, Animalic等を絶妙に配合 |
Oriental | – | 東洋的なエキゾチックな香調 中東や日本をイメージしたお香的な香り お香にPowderyな甘さとAnimalic感を足した香り |
種類の多い副香調の解説
Citrus (シトラス香調)
柑橘系の爽やかな香りで、柑橘類の多くは果皮から精油を得ることが出来ます。また、レモングラスのように、柑橘様の香りを持つハーブも存在します。
シトラス香調としては、大きく4つの系統に分けられます。爽やかな印象が強くて香り立ちが良いの柑橘類としては、LemonやLimeが挙げられます。そして柑橘類の果肉の様なジューシーな印象を与える柑橘類としてはGrapefruitやBlood Orangeがあり、苦味のある果皮の印象が強くあるMandarinやBitter Orange, Yuzuが代表例としてあります。
柑橘類の中で少し違うのが『Bergamot』です。Bergamotは、Lemonの様な酸味やOrangeの様な甘さはありませんが、天然の花に含まれる重要な香気成分(Linalool, Linalyl Acetate)を含有しているので柑橘類の中でもFloral様の高級感のある香りです。Bergamotの特徴的な香りは、香水の高級感あるTop Noteに適しており、香水で広く利用されている重要な天然香料素材の1つです。
- Fresh (爽やか) : Lemon, Lime,
- Juicy (果肉) : Grapefruit, Blood Orange
- Aldehyde (果皮) : Mandarin, Bitter Orange, Yuzu
- Floral (高級感) : Bergamot
Floral (フローラル香調)
花系の柔らかさと甘さのある香りで、Rose(薔薇), Jasmin(ジャスミン), Muguet(スズラン)を『3大フローラル香調』と呼ばれ、香水やフレグランスで多用される香調です。Lilac(ライラック)も3大フローラル香調に次いで重要です。3大フローラルにLilac(ライラック)を加えて、4大フローラルと呼ばれることもあります。
MuguetとLilacは重要なフローラル香調ですが、天然精油は流通していないので合成香料で香りを再現して使用されています。
他にもHyacinth(ヒヤシンス), Tuberose(チュベローズ), Orange Flower(オレンジフラワー), Ylang Ylang(イランイラン), Carnation(カーネーション), Narcissus(ナルシス, 水仙)などフローラル香調には数多くの魅力的な香りが沢山あります。
フローラル香調には花の種類による多くの副香調が沢山ありますが、香りの特徴と合わせた表現で副香調を示すこともあります。例えば、白い花を想起させる瑞々しい透明感の合うるFloralの香りを総称してWhite Floral(ホワイトフローラル)と呼ぶこともあります。また、複数のフローラル香を組み合わせて花束の様な香りを再現したFloral Bouquet(フローラルブーケ)と呼ばれ、花屋にいる様な感覚になることが出来る香りもあります。
- 3大Floral香調 : Rose, Jasmin, Muguet
- 4大Floral香調 : Rose, Jasmin, Muguet, Lilac
- White Floral : Jasmin, Muguet様の白い花を想起させる香り
- Floral Bouquet : 複数のフローラルを組合わせた花束の香り
美しさの象徴 ~ 愛される魅力ある花 Peony (芍薬の花) ~
Peony(ピオニー, 芍薬)は、 ボタン科に属するアジアが原産の多年草の一種です。古典園芸植物のひとつで、中国では古くから栽培されていました。
白のピオニーの花言葉は「幸せな結婚」
赤のピオニーの花言葉は「誠実」
香りも素敵ですが、花言葉も魅力的なPeony⭐️
『立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花』
このことわざは、美しい女性の立ち居振る舞いを例えたものです。芍薬(ピオニー)はすらりとした茎の先に綺麗な花を咲かせることから立ち姿の女性を、牡丹は枝分かれした横向きの枝に鮮やかな花を咲かせることから座った女性を、百合は風に揺れる姿が美しいことから女性が歩く姿を表していると言われています。
芍薬(ピオニー)は、薔薇よりも淡くて爽やかな香りがします。別名「5月のバラ」と呼ばれ、清々しい上品な甘さのあるピオニーは女性の美しさや魅力を引き立てます。最近では、ピオニーの香りは美しさや愛される女性の象徴的な香りとしてChloe Eau de Perfum (CHLOE)やMiss Dior (Christian Dior)などにも採用されているトレンドの香調です。
Woody (ウッディー香調)
樹木の心材や木材を削った際に嗅げるDryだけど柔らかな木の香りが代表的です。日本人にとって最も馴染みがあるのは、『檜(ヒノキ)』の香りです。檜は温泉や古いお寺などに使用されていますが、柔らかく、とても落ち着く木の香りがしますよね。
樹木の香りも木の種類によって様々あります。お寺に行った際に香るお香の香りは、重厚な甘さと柔らかさがある『白檀(サンダルウッド)』です。また、香木として香道で焚かれる高級感のある木の香りは『沈香(アガールウッド、ウード)』です。どちらもフレグランスだけでなく、お香としても日本人に愛される香木の香りです。
針葉樹では、木の香りと少し葉っぱ様のGreenな香りを併せ持つCypress(サイプレス)やPine(マツ)があります。様々な種類の木の香りがありますが、やはり最も木の香りとして馴染みが深いのは『シダーウッド(Cedarwood)』と『檜(ヒノキ)』です。
香水やフレグランスでは、木の香り(Woody香)と竜涎香(Amber香)の両方の特徴を持つ香りを『Woody-Amber香調』と呼びます。木の香りの柔らかさや甘さと共に、竜涎香のシャープで動物的な香りが加わることで綺麗で複雑な木の香りが表現されます。
Woody-Amber香として有名な香料素材として、IFF社が開発した『Iso E Super』があります。Iso E Superは、ほぼ全ての香水や日用品の香料に使われる程の香料素材です。また、Iso E Superのみを使用した香水がある程に魅力的な香りのあるWoody-Amber素材です。
Molecule 01 (Escentric Molecules)
IFF社のIso E Superだけで構成された香水
- Cedarwood : 木材を削った時の様な乾いた木の香り
- Hinoki (檜) : 日本人にとって最も馴染みのある木の香り
- Sandal (白檀) : 甘く、柔らかい重厚な木の香り、お香に使用
- Agarwood (沈香) : 高級感のある香木の香り、香道で利用
- Woody-Amber : WoodyとAmber香の特徴を持つ香り
まとめ
今回は香水やフレグランスの香調表現をまとめました。
まずは主香調の種類を理解しましょう!!
主香調を理解出来ると下記のことが出来る様になります。
- 香水レビューに記載されている香調を理解出来る
- 香水がどの香調に分類されるか自分で判断出来る
香水を嗅いで自分で香調を推察したり、表現することで香水を嗅ぐことの楽しみが大きく広がります。更に副香調も理解すると香水の違いを詳細に嗅ぎ比べることが出来る様になります。
香調を理解することは、香水を楽しむために必須です。
常に新しい香調を勉強しながら香水を楽しみましょう♪
参考資料
Fragrantica HP : https://www.fragrantica.com/notes/