香水に関する情報は世の中に沢山あって、インターネットやSNSにも香水好きな方々がレビューを載せているのを頻繁に見る様になりました。皆さん、好みの香水に対する官能評価を発信していて楽しそうですよね♪
ところで、香水に関する情報は私でも頻繁に見掛けるので探すことが出来るのですが、シゲさんは香料業界や香料素材に関する情報をどうやって知っているのですか?
こんにちは!! 香料研究者のシゲです。
確かに香水に関する情報とレビューは非常に多いですね。背景としては、香水の種類が多くなって非常に身近になったことや香水好きな方々がSNSにレビューを書いてくれることで情報が広がっていることが要因としてあると思います。特に香水名はもちろんですが、ブランドや産地、主香調や僅かな香りの特徴まで丁寧に書かれているので私自身も非常に参考になるので良く拝見させて頂いています。
ただ、香料業界や香料の情報を詳しく知ろうと思うとなかなか難しいです。それは、香水を製造する会社の多くが海外の香料会社や海外の有名ブランドだったりすることや香水の処方(レシピ)は非公開であることが挙げられます。料理も調理方法や味付けのレシピを教えてくれないのと同じですよね・・・。
今回は、これから香料業界で働きたい方、就職活動中の方、香水が好きでもっと香料の学習をしたい方の助けになればと思い、香料業界や香料素材の情報を調査して少しでも知るための有益なウェブサイトに関して紹介します。
上記にも記載しましたが、香料業界の主勢力は欧米の香料会社となります。どうしても情報を得ようとすると海外の英語で記載されているウェブサイトになってしまいます。英語の苦手な方も多いかと思いますが、Google等の翻訳機能をご活用頂ければと思います。
** 私も英語がそれ程得意ではないので、大丈夫です!!
香料業界について調べる
まず初めに香料業界について、香料の一般性や業界動向に関する情報を収集出来るウェブサイトを紹介したいと思います。香料の基礎的な知識と共にどの様な香調があるかや香料素材、安全性といった網羅的な情報を収集出来る業界団体が運営しているお薦めのホームページとなります。
日本香料工業会 (JFFMA)
1つ目は、日本国内においてフレーバーとフレグランスを製造、販売、輸出入などを行っている企業が会員となって組織構成された任意団体である『日本香料工業会』です。日本香料工業会は、日本の香料産業の香料産業の発展に必要な事業を行い、会員の事業に共通の利益を増進して、香料産業の繁栄に寄与すると共に香料の有用性・安全性等に関する情報の入手及び普及に努めることを目的として活動しています。
実際、日本香料工業会のウェブサイトでは非常に丁寧に香料に関する情報をまとめられております。著者の一押しは、「香りの教室」にある『キッズランド』です。ここでは、小さな子供向けの教材として非常に分かり易く香料に関する情報が書かれています。多くの著名な調香師は幼少期から香りと近しい所で生活して来たと言われますが、我々大人でも一緒に楽しめる内容になっております。より深く学習したいという方々にとっても「香料講座」で香料の研究開発に関する知識を得ることが出来ると共に、香料の統計情報やIFRAの安全性に関する専門的な知識についても記載されており非常に有用です。
欠点を挙げるとすると海外の香料会社を含む業界動向に乏しく、更新の頻度が非常に低いことが挙げられます。最新の香料業界の動向を把握したい場合や海外に関するトピックを調査するには不十分です。個人的には、参加している企業が非常に多い中で日本の香料業界の動向についても情報が特にない点に関しては物足りなさを感じてしまいます。
しかしながら、日本語で書かれているので最初の情報入手先としてはハードルも低く、非常にアクセスし易いのが特徴です。
Perfumer & Flavorist
2つ目は、香料業界では最も定番のウェブサイトである『Perfumer & Flavorist』です。海外も含めた香料業界の動向をいち早く教えてくれます。最近の香料業界の動きは激しく、企業間の提携や買収による統合などが盛んに進んでいます。日本にいると欧州での情報を直接入手することは難しいのですが、Perfumer & Flavoristを通して日本からでも非常に有益な情報を入手することが出来ます。
Perfumer & Flavoristの情報としては、香料会社間の提携や買収といった情報からファイナンス、香料素材や安全性、新製品の発表から現在の主流となるESGやSDGsといった環境に対する各社の取り組みについても提供してくれます。また、香料業界が主宰する世界的な香料の会議であるWPC(World Perfumery Congress)の情報も配信されるので世界の香料会社や日用品メーカーの取り組みについても知ることが出来ます。非常に多岐に渡る情報を網羅しており、香料業界で仕事をする上で情報を入手するために最も利用するホームページです。Perfumer & Flavoristには登録すると毎日、最近のニュースと過去のトピックをメールで配信してくれるサービスがありますので、まずは登録してみることをお薦め致します。
Fragrance Creators Association
最後は、世界の大手香料会社、香水を販売する有名ブランド、化粧品・日用品メーカーで構成されるFragrance Creators Associationのホームページになります。この組織は、香料のパワーを通してより良い世界を提供するために香料創作に賛同する企業が参画している組織です。香料原料を製造する化学会社から日用品のP&G, 香水のLVMHが参加していることからも影響力の高さが伺えます。
今回ご紹介したいのは、Fragrance Creators Associationが作成して昨年提供された『Fragrance Conservatory』です。香料の情報基地という位置付けで提供され、香料業界らしい華やかで見栄えの良いウェブサイトとなっています。見た目と同様に掲載されている内容も非常に充実しており、例えば香料素材の情報に関しては化合物を検索した後にどんな天然植物に含まれているのかや欧州での安全性はどうなのか等の情報を提供してくれます。また、香料を安全に使用するための情報や香水の成り立ち、香料の仕事に関するトピックもあるので香料の勉強を始めたけど英語に自信がない方が初めに読むのに非常に適していると思います。欠点としては、出来たばかりでまだ情報量が少ないことや抽象的で基礎的な内容が多く香料業界の動向に関する幅広い情報を得ることに関しては難しいかと思います。
日本から海外の香料業界の最新の動向に関する情報を得るのは難しいです。筆者としては、大手香料会社のウェブサイトを定期的にチェックすることと『Perfumer & Flavorist』をメール配信で確認する方法を最もお薦め致します。
香料素材に関して調べる
次は、香料素材に関する具体的な情報を入手する方法について説明したいと思います。香料素材に関する情報を検索する際に知りたい内容としては、化学物性や香調、どの会社が取り扱っているのか等がありますが、個人的には様々な情報をまとめて取集出来ることが望ましいと思います。
The Good Scents Company
香料業界において、これ以上の検索サイトはないと言える程に利用されているのが『The Good Scents Company Information System』です。余談ですが、著者は入社した当時は存在自体を知らなかったので、新人時代に来日された海外の調香師をアテンドした時に教わりました。ちなみにこの調香師から金木犀を英語でオスマンタスと呼ぶことも教わるという辱めを受けています(笑)。
The Good Scents Company社の検索システムですが、合成香料だけではなく天然香料も検索することが出来ます。更に、検索方法も化合物名だけでなく香調で検索をすることも出来るので化学的な知識がまだ乏しく勉強中の方にとっても非常に簡単に網羅的に調べることが出来る様に設計されています。全て英語で記載されていますが、文章ではなく英単語のレベルなので初学者にとっても非常に使い勝手の良い検索ツールだと思います。
調べたい香料素材毎に差はありますが、香調や取り扱いしている会社、どんな天然植物に含まれているのかや特許情報についてもまとめられています。香料業界でこれから働く方や香水に含まれている成分について詳しく勉強した方は、ぜひ導入してご活用して下さい。
The Good Scents Company Information Systemで検索出来る内容
- 香料素材の構造とCAS No. (欧州法規登録に関する情報もあり)
- 記載されている特許や文献に関する情報
- 化学物性 (log P、比重、沸点、蒸気圧、溶解性など)
- 香調、匂いの強度
- 素材の供給会社 (製造メーカーと販売会社の両方を含む)
- 安全性に関する情報 (R, H-phase、IFRAに関する情報)
- 天然物、食品に由来する成分かどうか
各香料会社Compendium
香料素材の検索をする際には、The Good Scents Company Information Systemを利用するのが最も効率的で網羅的です。しかしながら、大手香料会社は独自に自社で取り扱っている香料素材のリストとしてコンペンディウムを持っています。香料会社が持つ独自の香料素材や各社の香料素材リストを作成した場合には、香料会社のホームページから調査する方が早い場合もあります。The Good Scents Company社の検索システムと同様に、化合物名や香調で検索することが出来ます。ご自身の調べたい内容に応じて使い分けて頂ければ良いかと思います。
Givaudan
Firmenich
IFF (International Flavors & Fragrances)
Symrise
高砂香料工業
香水に関して調べる
最後は香水について調べる際に利用するウェブサイトを紹介します。個人の方の香水レビューを含めると香水に関する情報を載せているウェブサイトは非常に多いですし、個人による好みや他にも優良なウェブサイトがあるかと思います。ここでは、海外でも香料を愛する多くの方々に利用している香水情報を扱っているホームページに関して記載します。
FRAGRANTICA
香水の情報を検索するとしたら有名なのは、『Fragrantica』になります。香水を長らく愛用している方には馴染みのある、既にご存知のウェブサイトかと思います。海外のウェブサイトなので全て英語表記となってしまいますが、それでも香水を愛用していく上では絶対に利用したいですし、おそらく使ってみると絶対にずっと利用したくなります!!
Fragranticaで香水を検索する方法はいくつかあります。最も簡単な方法は、香水の名前または取り扱っているブランドの名称を入力することです。香水の名前が分からなくてもブランド名を入力するだけで香水の候補をボトルデザインと共に見ることが出来るので記憶が曖昧でも思い出しながら検索することが出来て非常に便利です。他にも調香師や香水の発売年による検索が出来ることも他の香水情報のサイトよりも優れていると思います。個人的にFragranticaの香水検索で最も愛用していて優れていると感じる点は、香調を複数割り当てて検索が実行出来ることです。例えば、香調としてBergamot, Jasmine, Sandalwood, Amber, Muskの特徴を持つ香水を調べたりすることが出来ます。新しく購入する香水の候補を探したりする際に非常に便利です。
実際に検索した結果が上記ですが、香水ボトルの絵や主香調の分類が簡単な英語単語レベルで表記されているので非常に見易いです。香水を勉強し始めたばかりの方や英語が苦手な方でも見ているだけで楽しそうですし、使えそうだと思いませんか??
各香水の香調分類に関しては、Top-Middle-Base毎にどの様な香調が含まれているのかも写真付きで記載されているのでとても参考になります。是非とも香水を勉強し始めた方やこれから香料業界で働く方に利用して頂ければと思います。
まとめ
- 情報検索に最もお薦めするウェブサイト3つ
- 香料業界全般 : Perfumer & Flavorist
- 香料素材 : The Good Scents Company
- 香水情報 : Fragrantica
今回は、香料業界や香料素材、香水の情報を入手するのに役立つウェブサイトを紹介させて頂きました。他にも多くの役立つホームページはあると思いますが、香料業界で働く際にも使えるウェブサイトを取り上げました。香料の勉強を始められる方や香水のレビューを書く際の参考になれば幸いです。