Fragrance (香料)

【本当に安全!?】フレグランスで使われているアレルギー成分と安全性について解説

シゲ

こんにちは!!香料研究者のシゲです。
今回は、香料で使用されている素材の中でアレルギーを引き起こす可能性がある特徴的な成分について解説したいと思います。

不安になることはありません!!
大手企業が販売している製品の香りは、国際的な安全性管理体制から設定された香粧品香料の安全性に関する国際的な業界自主基準に準拠した形で提供されています。

アレルゲン(Allergen)とは

『アレルゲン』とは、身体の免疫システムが脅威または攻撃と認識する化学物質です。つまり、刺激によって肌や健康状態に対して影響を与える外部因子です。しかし、多くの方が誤解している場合があります。それは、販売されている製品にアレルゲンになりうる化学物質が含まれていても、必ずしもアレルギー反応が起こるわけではないということを理解して頂ければと思います。

アレルギー反応は、アレルギーを引き起こす化学物質のアレルゲンに対して一定期間曝された時に発生、または誘発されます。これを『誘発』といいます。曝された化学物質に対してアレルギー反応が発生すると、肌などが赤くなったり発疹が出たりする症状が出ることがあります。これを『誘出』といいます。アレルギー反応が出るかどうかはアレルゲン物質の摂取量や曝露量、人の体質に大きく左右されます。

アレルギーを引き起こす可能性がある香料素材

香料として使用されている原料の中にもアレルギーを引き起こす可能性がある化学物質があります。アレルギーを引き起こすアレルゲン物質は、合成香料だけではなく天然香料にも含まれている香料成分もあります。特に、EU (欧州連合)の化粧品指令では下記の26種の香料原料についてアレルゲン物質として製品へのラベル表示を義務付けています。製品中に使用される原料のトータル量で、肌に残る製品中で0.001%、洗い流す製品中では0.01%を超えた場合に表示する義務があります。逆にこの量以下であれば、配合されていても表示されない事があります。日本ではまだ表示義務はありませんが、いずれ表示義務が課されることになると思います。

アレルゲン香料素材26品目 (欧州化粧品規制)

香料素材CAS No.成分情報
Amyl cinnamal
アミルシンナムアルデヒド
122-40-7
Benzyl alcohol
ベンジルアルコール
100-51-6
Cinnamyl alcohol
シンナミルアルコール
100-54-1
Citral
シトラール
5392-40-5レモングラス精油の主成分
レモンなどにも含有
Eugenol
オイゲノール
97-53-0クローブ、ローリエ、シナモン
いくつかの精油に含有
Hydroxy citronellal
ハイドロキシシトロネラール
100-75-5
iso-eugenol
イソオイゲノール
97-54-1イランイラン精油に含有
Amyl cinnamyl alcohol
アミルシンナミルアルコール
101-85-9
Benzyl salicylate
サリチル酸ベンジル
118-58-1
Cinnamal
シンナムアルデヒド
104-55-2シナモンの特有の香気
Coumarin
クマリン
91-64-5桜の葉の香気成分
抗凝血作用
Geraniol
ゲラニオール
106-24-1ローズオイル
シトロネラオイルに含有
Hydroxy methylpentyl
cyclohexene carboxaldehyde
リラール
31906-04-4合成香料(Lyral, リラール)
Anisyl alcohol
アニシルアルコール
105-13-5
Benzyl cinnamate
ベンジルシンナメート
103-41-3
Farnesol
ファルネソール
4602-84-0ローズやレモングラス、
シトロネラの精油に含有
2-(4-tert-Butylbenzyl)-
propionaldehyde
リリアール
80-54-6合成香料(Lilial, リリアール)
Linalool
リナロール
78-70-6ラベンダー、ベルガモット
多くの精油に含有されている
Benzyl benzoate
安息香酸ベンジル
120-51-4
Citronellol
シトロネロール
106-22-9バラやペラルゴニウム、
ゼラニウムの精油に含有
Hexyl cinnamic aldehyde
ヘキシルシンナムアルデヒド
101-86-0
d-Limonene
d-リモネン
5989-27-5柑橘類の果皮に含有
柑橘類の精油に含まれる
Methyl heptin carbonate
メチルヘプチンカルボネート
111-12-6
3-Methyl-4-(2,6,6-trimethyl-
2-cyclohexen-1-yl)
-3-buten-2-one
α-イソメチルイオノン
127-51-5
Oakmoss extract
オークモス抽出物
90028-68-55強力なアレルゲン成分の
アトラノールを規制
Treemoss extract
ツリーモス抽出物
90028-67-4強力なアレルゲン成分の
クロロアトラノールを規制

上記のアレルゲン成分は、欧州化粧品における表示義務がある香料素材26品目のリストとなります。実際には、3000を超す香料物質(成分)があるのでアレルギー性の弱い香料成分などが多数あります。
アレルギーを引き起こすかどうかはアレルゲン成分の濃度や使用頻度などによって変わってきます。アレルゲン成分とこれらを含有している製品が危険ということではないので注意して下さい!!

香料業界のアレルゲンに対する取り組み

カヨコ

化粧品や柔軟剤などの製造メーカーはどのようにして使っている香料の安全性を担保しているの??

『シャンプーや柔軟剤などの製品に使われている香料は本当に安全なのか?』という疑問は誰もが持っていると思います。化粧品や柔軟剤などの製造メーカーは香料素材の数種から数十種を混合した調合香料を使用していますが、実際の商品では個々の使われている香料物質名は明らかにされずに「香料」と表示されているだけです。

フレグランスの安全性を守るIFRAとRIFM

化粧品や柔軟剤などに使われる香粧品香料(フレグランス)の安全性は、『国際香粧品香料協会(IFRA, イフラ)』という国際的な業界団体が定める『IFRA実施要綱 (IFRA Code of Practice)』を遵守することで確保されています。IFRAは、消費者や環境に対して安全性の高い製品用香料を提供することを目的として国際的に活動する団体です。IFRA実施要綱は、あらゆる用途に使用される全ての香粧品香料素材の製造と取扱いに適用されます。そして、全ての香料会社と化粧品・日用品メーカーはIFRA実施要綱を遵守することが必須要件となっています。
IFRA実施要綱は、常に新しい科学的知見や安全性に関するデータを基に修正や改訂がおこなわれています。これらの修正や改訂の中には、新たに使用上の制限を設ける香料素材の追加や既存使用素材の制限の改訂などが含まれており、常に香粧品香料(フレグランス)の安全性を確保されています。

フレグランスの安全性を担うIFRA, RIFM (日本香料工業会HPより抜粋)

『香粧品香料原料安全性研究所(RIFM, リフム)』は、香粧品香料(フレグランス)に使用する香料素材の安全性を実際に研究・調査・評価している研究機関です。IFRAは、RIFMの安全性に関する科学的データと知見に基づいた「RIFM専門家委員会」の意見を聞いて香料を安全に使用するための基準(スタンダード)を設定しています。この基準を『IFRA Standard(イフラスタンダード)』と呼びます。このIFRA Standardは、使用を禁止する香料成分を設定したり、化粧品用途によって香料成分の使用量の上限を設定しています。香料会社と化粧品・日用品メーカーがIFRA実施要綱とIFRA Standardを遵守することで世界的な規模でヒト、環境に対する安全性を確保しています。

IFRA Standardによる規制
  • 使用禁止 (Prohibit) : 重大な安全性の懸念使用出来ない香料素材
  • 使用制限 (Restrict) : 最終製品中で最大使用量に制限がある香料素材
  • 規格設定 (Specification) : 純度や不純物等の量が規制されている香料素材

まとめ

フレグランスの安全性
  • IFRA : 消費者や環境に対して安全性の高い製品用香料を提供することを目的として国際的に活動する団体
  • RIFM : 香粧品香料(フレグランス)に使用する香料素材の安全性を実際に研究・調査・評価している研究機関

香料会社と化粧品・日用品メーカーはIFRA実施要綱とRIFMによる安全性に関する科学的データと知見から設定されたIFRA Standardを遵守することで世界的な規模でヒト、環境に対する安全性を確保しています。

近年、化粧品・日用品メーカーでは製品にどのような原料を使用しているかを公表している場合があります。また、製品ラベルに香料成分が記載されている商品も見られるようになってきました。
現在使っている商品や愛用している商品について一度調べてみてはどうでしょう!?

シゲ

今回は、アレルギーを引き起こす可能性のある香料素材とフレグランスの安全性に関する基本的な内容に関して書かせて頂きました。今回の記事は自身を守るための知識を学ぶことが出来ます。

一方で、アレルゲンは『香害』として他人にも影響を及ぼす可能性があります。香りの知識を深め、使用する際にはTPOを踏まえて使うように心掛けていきましょう!!

参考文献

日本香料工業会HP : http://www.jffma-jp.org
IFRA HP : https://ifrafragrance.org
RIFM HP : https://www.rifm.org/index.php

更新内容

  • 携帯での閲覧性の向上のために表に横スクロール機能を追加 (2020/03/19)
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